医療法人の設立
医療法の規定に基づく病院、医師もしくは歯科医師が常勤する診療所又は介護老人保健施設を開設しようとする社団又は財団は都道府県知事の許可を受ける必要があります。
医療法人といっても事業内容や体制によって、医療法人社団、医療法人財団、一人医師医療法人、特定医療法人、特別医療法人のように複数に分類されます。
全てを解説することは厳しいので、このサイトでは「一人医師医療法人」に絞って説明いたします。
一人医師医療法人とは
一般事業の個人経営者が、法人成りにより税制等で様々な恩恵受けれれるようになるのと同様に、医業経営の分野でも診療所のような小規模事業者の法人化が可能となりました。これを「一人医師医療法人」といいます。
一人医師医療法人あらまし
節税面に注目しがちな「一人医療法人」ですが、その本来の目的は、医師が一人または二人常勤するような診療所経営において、経営基盤の近代化・安定化を図るために診療所の経営収支と医師個人の家計とを明確に分離することにあります。
診療所の法人化については一般の個人事業者が法人成り(個人事業者から法人へ組織変更)する場合とほぼ同様のメリットが考えられますが、一般の会社であれば利益がでれば配当というメリットを享受できるのに比べ、医療法人は医業の非営利性によって配当は禁止されています。
そのかわり剰余金を医療施設の設備を充実することに当てることができますので、このことから言っても医療サービスの充実、経営の近代化・合理化にフォーカスした制度だといえるでしょう。
一人医師医療法人のメリット・デメリット
●経営上のメリット
- 組織の拡充・設備の充実及び経営基盤の安定化が図れます。
- 金融機関等の対外的な信用が向上し、診療所運営が楽になります。
- 従業員の帰属意識が向上し、経営への積極参加意識が芽生えます。
- 社会保険診療報酬について源泉徴収されなくなります。
●税務上のメリット
- 個人開業医の場合の所得税は累進課税 ですので、医業収入が多ければ多いほど税金の額も高くなりますが、法人の場合、課税されるのは法人税になります。法人税は一定率の課税となりますので、所得税 よりも有利になります。
- 院長及び院長夫人などの家族に対して給与支給することにより所得を分散することができます。
- 上記と同様に退職金の支払いが可能になります。
- 生命保険・損害保険の損金処理等、経費計上できる範囲が広くなります。
●一人医師医療法人のデメリット
- 付帯業務禁止規定により行うことができる業務が制限されます。経営の多角化という面ではマイナスです。
- 剰余金の配当ができません。
- 交際費に損金に認められる限度額が設けられています。
- 社会保険は強制加入となります。
- 各種法規の規制を受け、届出等の事務処理が増加します。
上記のメリットとデメリットは表裏一体です。
多くに恩恵を受けることとなれば、それだけ多くの規制を受けることにもなります。
法人となれば責任も加重されますので、短期の事業だけでなく長期の展望を考え、また経営面だけでなく家族やご自分の老後の生活等様々な観点からご検討されることをご提案いたします。
一人医師医療法人と隣接法人との違い
●MS(メディカルサービス)法人との違い
MS法人とは、一般の株式会社・有限会社に代表される営利法人であり主に診療業務に付随する賃貸管理・医療品材料の仕入・在庫管理・保険請求・受付事務や各種サービスを提供するものです。
医療法人のように診療報酬を受け取ることはできません。規定される法規の違いから規制される内容に違いがあります。
MS法人と医療法人を設立した場合、その相互取引には合理的な契約内容・価格等により契約書を取り交わす必要があります。また、MS法人と医療法人の役員を兼務することは認められません。このように税務上格段の注意と配慮が必要になりますのでご注意下さい。
●医療法人との違い
一人医師医療法人の場合には、常勤勤務医が一人でもよいとされている点が大きな違いです。正味資産や収支見込等の細かい部分での違いはありますが、病院である医療法人とは法的には同じ存在と言えます。常勤勤務医が少ない診療所では、一人医療法人を選択することになります。
一人医師医療法人設立の流れ
一人医師医療法人について概要をご理解いただいたところで、いよいよ、その設立手順について解説します。
一人医師医療法人設立、申請人の要件
申請人は、医師及び歯科医師に限られ、「設立代表者として主務官庁に申請することになります。しかし、次の欠格要件に該当していないことが条件になります。
- 被成年後見人、被保佐人
- 医療法・医師法・歯科医師法及び関係法令の規定に過去2年間に違反した者
- 禁固以上の刑に処せられ、刑を執行されているか執行猶予期間中の者
一人医師医療法人設立手順
一人医医師療法人の設立には、自治体によってまちまちですが、3ヶ月から6ヶ月の期間を要します。一般の会社の設立と違い、かなり時間が必要です。
ステップ1
- 審査は年に1回〜3回と少ないので、機会を逃さないように注意しょう。
- 上記の審査受付期間を含めた審査スケジュールを所轄の都道府県の衛生部医療整備課に確認しましょう。
ステップ2
- 説明会が開催される場合もあります。事前説明相談資料が交付されますので参加します。
- 説明会がない場合には、所轄の都道府県の衛生部医療整備課に確認し資料を入手します。
ステップ3
- 入手した資料に記入し、提出することでエントリーされます。
ステップ4
- その後は下記の図のような手順で進んでいきます。所轄の官庁からのヒアリング及び指導を受けながら進めていきますので、できれば専門家にアウトソーシングされた方が良いでしょう。



