基金の制度、基金拠出型法人の解説
医療法人の種類のところで「出資持分の定めのある医療法人を設立することはできなくなりました」と解説しました。すなわち現在設立できる医療法人社団は「出資持分の定めのない医療法人」ということになります。この「出資持分」についての考え方が結構重要でして、下記の理由から、改正後は医療法人の設立が減少する傾向がありました。
一般の会社であれば、仮に会社が解散した場合は、債務等を弁済し清算後に残る財産に関して、出資をした株主がその株式数に応じて分配を請求することになります。
「出資持分」がないということは、このような残余財産について請求することができなくなりますので、医療法人を開設する際に現預金や医療機器等を拠出したとしても払い戻しを請求することができなくなった訳です。
「出資持分の定めのない医療法人」が解散した場合の残余財産がどこにいくかというと、国や地方公共団体、他の医療機関等にに処分することとなっています。個人診療所時代に苦労して設備等を購入しても、払い戻しが認められないというのは、結構キツイ話です。
こうなると実質法人化するメリットが少なくなりますので、新制度の下での法人の設立数が減少していったのでしょう。
しかしながら、新制度では、このデメリットを補完する制度も同時に整備されることとなりました。
これが下記で説明する「基金」という制度です。
これからの主流「基金拠出型法人」
「基金」の制度ができ、制度の枠組みや運用方法が徐々に明確になってきたことで、現在は法人化する医療機関が増加しています。
それでは、「基金」とはどういう制度なのか、その制度を利用して設立する法人の形態について簡単に説明します。
「基金」とは、医療法人社団に拠出された金銭その他の財産を、医療法人が拠出した者に対して、定款の定めるところに従い返還義務を負うという制度です。これにより「出資持分の定めのない医療法人」であっても、拠出した財産を返還してもらえる権利が保持されることになります。拠出した財産の返還については、多少の条件等はありますが、返還請求さえできない場合と比べると天と地の差ですよね。
さて、この「基金」により設立された「出資持分の定めのない医療法人」を「基金拠出型法人」と呼び、この基金の制度を選択するかどうかは任意ですので、「出資持分の定めのない医療法人」は、制度を選択した「基金拠出型法人」と「一般の持分の定めのない医療法人」の2種類に区分されることになります。
「基金」のメリットを考えると、個人の経営の診療所が社団型の医療法人を設立する場合には、「一般の持分の定めのない医療法人」よりも「基金拠出型法人」を設立するケースが多くなることに間違いありません。以降の説明は、「基金拠出型法人」をベースに話を進めていきます。
医療法人の設立認可の手引き(福岡版)~医療法人の組織と申請人の条件へ続く
医療法人の設立認可の手引き(福岡版)目次
- 医療法人の設立認可サービスと概要
- 設立認可サービスについての紹介と医療法人の種類及び一人医療法人について解説します。
- 「基金の制度」と「基金拠出型法人」について
- 出資持分の定めのある医療法人を設立することはできなくなりましたが新たに「基金」という制度ができました。
- 医療法人の組織と申請人の条件
- 申請ができる人の条件と理事や監事等の役員の人的な組織構成や役割について解説します。
- 設立認可のスケジュール
- 認可申請の準備から認可後の診療所を開設するまでのスケジュールを解説します。
- 設立事項と準備書類
- 認可申請までに決めておくこと、準備する書類について具体的に解説します。